おさいふんのブログ

耳かきや遊戯王デュエルリンクスなど

「秋本治の仕事術」感想・レビュー

(ネタバレを含みます)

 

お久しぶりです。

こち亀の秋本先生が新刊を出しましたね。

 

 

表紙からしてビジネス書の雰囲気ですが「秋本先生が自身の仕事を振り返りをしつつそれを元に少し読者にアドバイスをする」本でした。(ビジネス書をあまり読まないためもしかしたらズレているかもしれません。しかし説教臭くない文体で淡々と書かれています)

そのため、この本は「超長期連載を成し遂げた作家のテクニックを学ぶためビジネス書を読む」「ファンが秋本先生の仕事の話を読む」の2つの目線から読むことができ、そこが本書の大きな特徴です。

 

まずはビジネス書として読んでみます。

全体的に「いやそれ出来れば苦労せんわ!」的な内容が多いです。

なぜなら初っ端から「好きで好きで仕方ないと思えるものを見つけるべき」というなかなかハードルの高そうなアドバイスがあります。

これ大変な人はすごく難しいでしょう。

オタクですら加齢と共にオタク活動の興味を失っていくといわれているのに…

もちろん「見切りをつきる」「朝7時半に起きて9時から仕事」「スケジュール管理は大事」などすぐ実行できそうなものもありますが。

本書のアドバイスの内容は秋本先生の持つ強烈な真面目さと自律心だからこそ出来ているのではないか? と思わせる内容も多いです。それが最も表れているのは「大きな仕事が終わった翌日もまたいつも通りに仕事をする」とある章です。

しかしそれ以外の「時間術」「発想術」「コミュニケーション術」「健康術」「未来術」は実行しやすいものが多いと感じます。

特に発想術の章は創作オタクは全員読むべきでしょう。

 

では次に秋本先生の仕事の話を読むという視点ではどうでしょうか。

こち亀がデビューした1976年当時は劇画のギャク漫画ということが斬新でウケたというエピソードは他のこち亀関連誌でも度々書かれており有名ですが、この本は時代背景までも触れており、丁寧です。(p19)また、若者特有の勢いのある作風として自身の例をあげており「ポルシェのキーデザインをめちゃくちゃ豪華に描いたりもしました」と作中書かれていますが、恐らくこれかと思います。

f:id:osaifun:20190806164338j:image

 (36巻ポルシェ一代男の巻から。小さく「本物を見たことないので想像で書いた」)

アドバイスの内容はともかく、古いネタを拾ってくれるとこち亀オタクとしては本当にうれしいです。

更には秋本先生とは時間厳守・毎年スケジュール管理用の集英社の社員手帳を渡すようにと歴代の担当者が引き継いでいることや大御所漫画家とゴルフなど秋本先生も日常生活まで少し読めてしまうこち亀オタクにとってたまらない本です。

こち亀アニメに関しては「人一倍強いジレンマを抱えた。『違うんですって。なんなら僕が描きましょうか?』といいたくなるほど」「最初の頃は脚本も隅々までチェックし細かく直しをいれた」「OKと思えることが多くなったらアニメ会社にすべてお任せした」とまで書いてあります。アニメこち亀は最初期と最後ではかなり作風が異なっていますが、これはそういった経緯があったからなのではないでしょうか。

こち亀実写ドラマ(香取慎吾版)に関しては「実写に関しては全くの別物」「世界観さえズレなければあとはご自由にどうぞ」とあります。これは安心していいのか悪いのか…香取版はこち亀の世界観に忠実です。実際の亀有でロケをしたりと香取慎吾が両津役である以外は世界観の再現に凝っていると思います。ですから、あれは秋本先生的にはOKなのだと受け取ります。

 

最後に巻末見開きでこち亀漫画がついてきます。嬉しい。絵が若干190巻頃より書き込まれた感じに。あと部長がタバコ吸ってます。禁煙はどうしたんですか部長!?